2006年月号(通巻第691号)
特集 「勝ち組・負け組」ではない教育を

最新号表紙

表紙絵/杉田みちこ(横浜市・小学校4年)
「わたしのすきなお店」
(指導/今給黎博子)

特集の主旨

 人の人生を「勝ち,負け」で表現する、またそういうことを何のためらいもなく口にする、とても変な世の中になっていると思います。ライブドアの騒動で少し鳴りを潜めていますがこの単純で分かりやすい表現は、子ども達から若者、大人の世界にまで意外な勢いで浸透しています。

 恵まれた層とそうではない層の2極に分裂したまま格差がうまらない。それどころか広がっていくばかりという見通しもあります。その風潮を敏感に感じ取った子どもたち、若者は「負け組」・弱いものの側に立ちたくないともがき競争、競争の社会に身をさらしています。競争原理の教育の中で学ぶ喜びや意欲がもてず、自信を失った子どもたちや若者が増えていく社会に、教育はどのように立ち向かっていくか、そのためには教師の視点は、この単純な二つの価値基準に惑わされず,豊かな人生観をもつ人に育てる道筋に向けられなければなりません。この号ではキャリア形成や進路指導、教科実践の中で学ばせられることを考えながら,新しい道筋は何かを考えたいと思います。


もくじ

グラビア/入学式から9日目の運動会 東京・和光中学校

おや・おや 松尾恭子日本語を母語としない子どもたち

表紙の絵 指導/今給黎博子

北から南から/私もひとこと 西村 誠「国を愛する心」の教育について

シリーズ/日本国憲法と私たち/第3回 三村和則日本国憲法と私

連載/教師誕生の記/第三回 木村勝保良き生涯の師をもてたこと

連載/教育してます?II/vol.3 内田春菊

連載/らららとラララン/第3回 祖父江真奈

特集/実践1 藤掛沖幸「勝ち組・負け組」と言われる狭間で

特集/実践2 井上実由紀インドネシア バリでの活動

特集/実践3 児美川孝一郎
社会現実にどう降り立つか?──大学における「キャリアデザイン教育」の試み

論文1 加藤聡一大競争社会=構造改革の社会と教育の特質
──出口にどういう社会をともにつくっていくのか──

論文2 春日井敏之ニート・フリーター問題と青年の自立
──与えられた自己実現・適応競争を超えて──

実感のある学びをつくる授業 加川博道
啓ちゃんと子どもたちと「算数の授業」──授業の中で認め合う・自己実現をはかる

研究部/子どもとともにつくる生活教育の実践 樋口雅子・山崎一希
水戸芸術館「高校生ウィーク」──つながる関係と場
研究部コメント
中妻雅彦

今月のうた 木村 瞳「ひとつをみんなで」
みてきいてよんで
石川義人
子どもの本棚/お薦め作品
横山雅代
事務局だより
次号紹介・編集後記


編集後記

 今号は、若者の社会問題を特集に組んで、編集活動をしていましたが、「むずかしテーマをとりあげてしまったかな」「こういうテーマの本は売れるのだろうか」と、少々後悔と不安が頭をよぎったの、正直なところ。

 しかし、今年のメーデーでは、「今世紀最大の危機の憲法・教育基本法改悪問題」は勿論、「格差社会の是正」「若者の雇用問題」がシュプレヒコールされ、今まさにときの課題であることを確信した。

 そして、各論文を読みながら、「そうだ」「なるほど」と納得し、学ぶ喜びを見出してしまった。そして実践。教育とはなんなのかを改めて感じさせ、世界へ広がる「人」への熱い思いや地道な人に寄り添った実践に、わたしも熱くなりました。

 今回の特集は教育のロマンあふれ、力が湧く自信を持ってお勧めしたいものとなったと思うのは、わたしだけでしょうか。

(中河原良子)