2005年月号(通巻第679号)
特集 学力低下は何のせい?──さかれる教育とつながる教育

最新号表紙

表紙絵/清谷あきのぶ(横浜市・小学校2年)
「シャワーをあびた」
(指導/今給黎博子)

特集の主旨

 昨年12月にあいついで発表された調査で、かつて学力世界トップを誇った日本がその位置を下げたことが報告された。
 日本の子どもで深刻なのは学習意欲の低下だと言われているが、精神疾患で仕事を続けられない教員の数が過去最高を記録したことも同様に深刻だ。子どもが学習意欲をなくし、教員も健康を害するほどの状況に追いつめられているのだから、学習の成果が上がるわけがない。
 中山文科相は「今までの教育に欠けていたものは競い合う心」と言うが、競争教育の弊害はすでに実証済みである。学力を低下させ、学ぶ意欲を失わせているものは何なのか、また、その対応策が教育特区構想や習熟度別学級、総合学習の廃止でいいのか、展望の見える号とした。

もくじ

グラビア/全国集会 埼玉で

おや・おや 鳥羽 恵「卒業式・入試説明会・入学式」×2の二〇〇五年の春

表紙の絵 指導/今給黎博子

私もひとこと 木村勝保最後の授業(わかるということ)

新連載/いま、改めて教育基本法を読む/第三回 横山尤子
「新しい学校の雰囲気は?」──第1条によせて

連載/スクランブル*母として女優として人として/第21回 風吹ジュン

新連載/教育してます?/その3 内田春菊

新連載「宮沢賢治の四季」/第3回 三上 満
六月──青々とつづく稲田の中で

特集/実践1 大谷猛夫中学生の学力は低下しているか

特集/実践2 小手川弘子「あすの木探検隊」が行く
──地域の人々とのつながりの中で育った子ども達──

特集/実践3 稲打八郎どの子もわかる授業を
──算数少人数指導をとおして──

論文1 岩辺泰吏生きることと学ぶことをつなぐ・わたしたちの仕事

論文2 梅原利夫学力──深まりとつながりの中で人間力に束ねる

北から南から/教育・サークル情報 山本ケイ子青森から 馬具職人あり

実感のある学びをつくる授業 伊藤邦夫熊は私たちに何を訴えているのか?

研究部/子どもとともにつくる生活教育の実践 松本あゆみ
発表からひろがる・つながる(1年生の生活勉強)
研究部コメント
本田 功

今月のうた 宮武孝太「ぼくんちのチャボ」
みてきいてよんで
河合 民『輝いて生きよう! 中学生』
子どもの本棚
横山尤子・野間成之
事務局だより
次号紹介・編集後記


編集後記

 「学力低下」が広くいわれるようになり、その改善のためと称して授業時間の確保から学力一斉テストまでさまざまな方策が始まっている。しかし「下がった」と言われる「学力」がどういうものかの吟味が今必要である。
 「イラクの正確な位置も知らない高校生が4割もいる」と日本地理学会の調査結果が報道されたが、「イラクの正確な位置を知ることより、イラクで何が起こり、自衛隊の派遣について考えることが社会科学習の中身」だと大谷氏は主張する。一斉学力テストはその結果が学校評価にもつながるために、「模擬試験」を行ったり、成績の悪い生徒の答案は抜いて平均点を挙げるような操作が平然とおこなわれている。これでは改善どころか共同の学びで学習を深めて行くという本来の姿には繋がらない。競争をあおり、機械的な習熟と鍛錬に子どもたちを追いこむことは勉強嫌いをつくるだけ、と大谷氏は警鐘をならしている。
 岩辺氏がデンマークで出会った教育指導者の「競争ではなく協同を学ぶ場が学校だ」「ディベートは取り入れない。相手を言い負かすのではなく、大切なのは対話からより高い知を生み出す協同」ということばは日本の教育現場を考える上で示唆に富んでいる。氏の長い現場経験に裏打ちされた論文は堅苦しくなく読めて説得力がある。
 稲打実践は教室に具体物を持ちこみ、「つまづきは学び合いの種」「つまづきは『宝』だ」を合言葉に間違ったわけをみんなで考えることでもっと深く学べたという体験をつみ、そのなかから子ども同士の信頼関係を育んでいくという、まさに「つながる教育」の報告。そして小手川実践はさまざまな障がいをもつ子どもたちが、地域の人々との繋がりの中で育って行く様子が語られている。勿論小手川先生の丁寧な下地づくりがあったからこそ地域のお団子屋さんやコロッケ屋さんが子どもたちを受け入れてはくれたのだろう。
 梅原論文は今何が必要かを論じてくださるはず。
 この特集から「学力低下は何のせい?」がみえてきたとすれば、その対応策もまたみえてきたのではないだろうか。(田中伸子)